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東京高等裁判所 昭和63年(ネ)2093号 判決 1992年8月28日

控訴人

佐藤茂

右訴訟代理人弁護士

中村洋二郎

中村周而

土屋俊幸

金子修

上条貞夫

工藤和雄

川上耕

鈴木俊

高橋勝

足立定夫

味岡申宰

中野麻美

志村新

被控訴人

株式会社第四銀行

右代表者代表取締役

中村正秀

右訴訟代理人弁護士

石田浩輔

坂井熙一

安西愈

斉木悦男

井上克樹

外井浩志

右弁護士安西訴訟復代理人弁護士

込田昌代

主文

一  控訴人の本件控訴及び当審において変更した請求をいずれも棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  控訴人

1  原判決中、控訴人の金員請求を棄却した部分を取り消す。

2  (主位的)

被控訴人は、控訴人に対し、一六七二万五八一九円及び別紙債権目録(一)の各差額欄記載の金員に対する同目録の各支払年月日欄記載の日の翌日から支払いずみまで年六分の割合による金員を支払え。

3  (予備的)

被控訴人は、控訴人に対し、九四二万九六五二円及び別紙債権目録(二)の各差額欄記載の金員に対する同目録の各支払年月日欄記載の日の翌日から支払いずみまで年六分の割合による金員を支払え。

4  訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。

5  仮執行の宣言

(控訴人は、原審における請求のうち、労働契約上の地位確認を求める部分につき訴えを取り下げ、金員の支払を求める部分につき右のとおり請求を変更したものである。)

二  被控訴人

主文同旨

第二  当事者の主張

次に記載するほか、原判決の事実摘示のとおりである。

一  原判決の補正

1  原判決六頁一五行目を次のとおり改める。

「控訴人は、昭和六〇年二月一〇日付けで営業推進部部長補佐となり、昭和六一年一二月から業務役の職につき、平成元年一一月四日に六〇歳達齢により被控訴人銀行を定年退職した。」

2  原判決一四頁四行目の「学働委員会」を「労働委員会」に、同一三行目の「考へて」を「考えて」に改める。

3  原判決三五頁七行目の「(四)」を「(三)」に改める。

4  原判決三六頁三行目の次に行を改めて「昭和六二年冬金八一万七九六九円」を加える。

5  原判決三六頁一三行目から三七頁一二行目までを次のとおり改める。

「従前の定年後在職制度により控訴人が五五歳に達した昭和五九年一一月四日から五八歳に達した昭和六二年一一月四日までに得ることができた定例給与及び賞与は、別紙債権目録(二)の「旧定年制による支払額」欄記載のとおり合計二八七〇万九七八五円である。これに対して、本件定年制により控訴人が五五歳から六〇歳に達した平成元年一一月四日まで得た定例給与及び賞与は、別紙債権目録(一)の「新定年制による支払額」欄記載のとおり合計三〇七八万七二七八円である。

従前の定年後在職制度の下で五五歳以降三年間に得ることができた賃金と本件定年制の下で五五歳以降五年間に得た賃金との差は、わずか二〇七万七四九三円にすぎず、これからさらに、定年後在職制度では五八歳までに支払われるべき賃金が六〇歳まで繰延べ払いされたことによる利息相当分一二一万四一四五円を差し引くと、差額はもっと少なくなる。」

6  原判決三八頁二行目から同九行目までを次のとおり改める。

「以上によれば、控訴人が定年後在職制度の下で五五歳から五八歳までに得ることができた賃金及び退職金とそれらの利息相当分の合計は四三四三万二七五五円となるのに対して、控訴人が本件定年制によって五五歳から六〇歳までに得た賃金及び退職金の合計は四三〇八万六二七八円であり、後者が三四万六四七七円も少ないことになる。

すなわち、本件定年制は、従前の三年間の賃金で五年間働かせるものであり、延長された二年間はただ働きになるどころか、かえってマイナスになるものである。このような定年延長は、明らかに合理性がなく、控訴人の既得権を侵害するものであって許されない。」

7  原判決三九頁三行目から同八行目までを次のとおり改める。

「控訴人は、五五歳から六〇歳の定年退職までの間、被控訴人銀行から前記のとおり定例給与及び賞与合計三〇七八万七二七八円の支払を受けた。

本件定年制は、何ら合理的理由なくして五五歳達齢後の賃金を一方的に切り下げることにより、従来の定年後在職制度(実質五八歳定年制)に基づき控訴人の有した既得権を侵害するものであり、無効というべきところ、被控訴人銀行は、控訴人から、五八歳達齢後も引き続き従前どおり労務の提供を受けていたのであるから、控訴人との間においては、定年後在職制度による五八歳達齢直前の賃金その他の労働条件のままでその後の雇用関係が継続していたものと解すべきである。

したがって、被控訴人銀行は、控訴人に対し、六〇歳退職時まで別紙債権目録(一)の「旧定年制による支払額」欄記載の定例給与及び賞与合計四七五一万三〇九七円を支払う義務があったにもかかわらず、前記のとおり三〇七八万七二七八円しか支払っていないから、その差額一六七二万五八一九円の支払義務がある。

仮に、五八歳達齢後は定年後在職制度による賃金の支払義務がなくなるとしても、少なくとも五八歳に達した昭和六二年一一月四日までは、定年後在職制度による定例給与及び賞与として別紙債権目録(二)の「旧定年制による支払額」欄記載のとおり合計二八七〇万九七八五円を支払う義務があったにもかかわらず、被控訴人銀行は、同日までの定例給与及び賞与として本件定年制により合計一九二八万〇一三三円しか支払っていないから、その差額九四二万九六五二円の支払義務がある。」

8  原判決三九頁九行目から同一六行目までの「8」の項を次のとおり改める。

「よって、控訴人は、被控訴人銀行に対し、昭和五九年一一月四日から六〇歳達齢時の平成元年一一月四日までの右賃金差額一六七二万五八一九円、少なくとも五八歳達齢時の昭和六二年一一月四日までの右賃金差額九四二万九六五二円、及びこれに対する各支払期日の翌日から支払ずみまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求める。」

9  原判決四〇頁一行目から同一四行目までの「被告の本案前の主張」を削る。

10  原判決四一頁四行目の「六月二七」を「六月二七日」に改める。

11  原判決五一頁の昭和五五年度の男子事務行員の定年後在職者の退職年齢五六歳ないし五七歳の人数「七」を「六」に、同五八歳の人数「五」を「六」に改める。

12  原判決一〇一頁一五行目の「業容」を「業績」に改める。

二  当審における控訴人の補足主張

1  被控訴人銀行において実質五八歳定年制をとることは、昭和二二年六月三〇日の労使交渉で合意されたことであり、控訴人の労働契約の内容をなしていたものであるが、それ以来長年にわたり被控訴人銀行内で確立された慣行となっていたものである。このことは、原審において指摘した運用実態や行報その他の記載等に照らして明らかである。この労使の合意と慣行による控訴人の既得権を本件就業規則の変更によって一方的に否認することは許されない。

2  本件定年制を内容とする就業規則の変更は、極めて不合理なものであり、就業規則の不利益変更が例外的に許容される場合に当たらない。主な不合理点を挙げれば、次のとおりである。

第一に、前記のとおり、延長された二年間はただ働きを強制するに等しい。

第二に、従前と同じ労務に従事し責任も同じでありながら、五五歳に達したというだけで従前の賃金を大幅に引き下げることは、同一労働同一賃金という労働契約の原則に反し、年齢による不当な差別であって、国際人権規約A規約にも抵触する。

第三に、主事二級の資格を有する役席者である控訴人の賃金が、権限も職務内容もまったく異なる三三歳の非役席者と同程度の水準になるという極端な不均衡が生じる。

第四に、本件定年制による五五歳以降の賃金大幅引き下げは、定年後在職制度の下で五八歳まで一貫した賃金体系により生活できると考えてきた中高年齢層の行員の生活設計を大きく狂わせ、不安を増大させた。

第五に、本件定年制を採用するにしても、控訴人のようにただ働きになる年齢層の行員には、従前の定年後在職制度を選択して、同制度による賃金を得て五八歳で退職する余地を認める経過措置を講じるべきであったのに、その措置がとられていない。

3  被控訴人銀行は、定年延長に伴う人件費の負担増に耐えるだけの経営上の余裕がなかったと主張しているが、事実に反する。被控訴人銀行は一〇〇億円以上の経常利益を出しており、配当性向は、昭和六〇年度32.13パーセント、昭和六一年度31.86パーセント、昭和六二年度26.01パーセントと低い水準にある。こうした数字からみても、被控訴人銀行の経営環境が厳しいとは到底いえないものである。また、被控訴人銀行の賃金水準は、他の地方銀行あるいは県内の他業種企業の賃金水準より決して高いものではない。

4  定年延長が社会的要請であり、被控訴人銀行の従業員組合もこれを要求していたことは、本件就業規則変更の不合理性を正当化するものではない。定年を実質五八歳から六〇歳に延長するからといって、中高年齢層行員の既得権を侵害し、五五歳に遡って賃金を引き下げ、延長した二年間がただ働きになるような不利益変更をしてよいことにはならない。また、被控訴人銀行の従業員組合では本件定年制の実施に同意しているが、組合執行部は、中高年齢層行員の被る不利益を無視し、各職場の意向を十分反映しないで妥結に走ったものであり、かかる組合の同意をもって本件定年制を内容とする就業規則の不利益変更の合理性を認めることはできない。

5  被控訴人銀行が従業員組合と締結した本件労働協約が控訴人に拡張適用されるべきでないことは、原審において主張したとおりである。控訴人は、被控訴人銀行の管理職の地位にあり組合加入資格のない者であるから、この点からも労働協約の拡張適用は受けない。

仮に、特段の事情がある場合に例外的に拡張適用を認める余地があるとしても、本件労働協約の内容となっている本件定年制は、前記のように、控訴人の既得権を侵害し、五五歳以降の賃金を大幅に引き下げ、二年間のただ働きを強いる不合理なものであるから、拡張適用を認めるべき特段の事情があるとはいえない。原判決のように本件就業規則の変更の合理性を否定しながら、それと同じ内容を定めた本件労働協約の拡張適用を肯定するのは矛盾している。

三  控訴人の主張に対する被控訴人の反論

1  控訴人の右主張は全部争う。

2  被控訴人銀行における定年後在職制度は、労使間で合意されたものではないし、事実たる慣習として拘束力を有するものでもない。過去の事実上の取扱いの積み重ねについて、将来にわたる拘束力までを認めるためには、当事者が将来ともその取扱いに従うという規範意識をもっていることが必要であるが、定年後在職制度についてはそのような規範意識は成立していない。

3  本件定年制を採用した就業規則の変更が合理的なものであることは、原審において主張したとおりである。労働条件の集合的、統一的処理を目的とする就業規則の変更について、ひとり控訴人の利益、不利益のみを強調してその効力を論じることは適切でない。

労働基準法九〇条は、就業規則の作成、変更について労働者の集団的意思を尊重し、また、同法九二条は、労働協約の効力が就業規則に優先する旨を定めていることからみても、従業員組合との合意に基づいて本件定年制を採用し、かつ、労働協約にも同一の内容が定められている本件就業規則の変更は、合理的なものとして尊重されなければならない。

4  労働協約の拡張適用についていわゆる有利原則が働く旨及び管理職には拡張適用が及ばない旨の控訴人の主張は法律上の根拠を欠く。本件労働協約の成立過程は、控訴人のいうように不公正なものではないし、その内容も合理的であり、これが控訴人に適用されないと解すべき理由はない。

第三  証拠関係<省略>

理由

第一事実関係

当事者間に争いがない事実と証拠(<書証番号略>、証人平田貞次郎、久保田隆、伊藤政幸、大倉伸吾、北昭、伊藤勝の各証言、控訴人の供述)に弁論の全趣旨を合わせると、次の事実を認めることができる。

一控訴人(昭和四年一一月四日生まれ)は、昭和二八年四月一日に被控訴人銀行に入行し、昭和五四年八月に融資第一部部長補佐、昭和六〇年二月に営業推進部部長補佐、昭和六一年一二月に業務役となり、六〇歳に達した平成元年一一月四日をもって被控訴人銀行を定年退職したものである。

被控訴人銀行は、請求原因記載のとおりの来歴、規模等を有する地方銀行で、新潟県下では最も大きい金融機関である。

二被控訴人銀行の従前の定年制

1  被控訴人銀行には、昭和六年ころから満五五歳を定年とする内規があり、昭和一九年一一月当時の行規では、「職員満五十五歳ニ達シタルトキハ停年トシ退職セシム。停年ニ達シタル者ハ辞令ヲ以テ解職ス。但シ引続キ在職ヲ必要ト認ムル者ハ其ノ停年ヲ延長スルコト得」と定めていた。実際には、合併した他の銀行に定年制の定めがなかったり、戦時下の人手不足があったりしたため、満五五歳になっても定年延長を認められる行員が多かった。

2  昭和二一年八月に結成された第四銀行職員組合は、同年一〇月二四日、被控訴人銀行に提出した要求事項の中で、行員の定年を五八歳とすることを申し入れたが、これに対して、被控訴人銀行は、現状を変更しない旨回答した。組合は、昭和二二年五月二四日にも同様の定年延長を再度要望したが、被控訴人銀行は、同年六月三〇日、定年を規定の上で三年延長するという点は今少し経済界の情勢を見極めた上で決定することにし、それまでは従前どおりで行きたいことを回答した。

なお、控訴人は、右六月三〇日に被控訴人銀行と組合との交渉が行われ、その交渉において実質五八歳定年制を実施することが合意された旨主張するけれども、右事実を認めることはできない。

3  被控訴人銀行は、昭和二三年一月一日から実施した就業規則において、行員は「停年(満五十五歳)ニ達シ解職サレタルトキ」に退職するものと定めたが、退職手当算定の基礎となる勤続年数については、入行日から解職発令日までとし、五八歳を超えて在職した場合には五八歳達齢日までの在職期間を勤続年数として認めることにした。

4  昭和二四年秋ころから、退職金の改定をめぐる被控訴人銀行と組合(当時は第四銀行従業員組合と改称していた。)との紛争について、新潟県地方労働委員会で調停が行われた。その調停の過程において、被控訴人銀行は、五五歳定年を組合の要求で五八歳まで延長していることを考慮して退職金を決めるべきである旨主張したが、組合は、定年制の問題と退職金の問題は無関係であると反論した。

同年一二月二〇日に行われた労使協議の席上、被控訴人銀行は、(一) 現在五八歳まで定年退職の期限を事実上延長しているが、昭和二八年一月一日からは右の退職期限の事実上の延長を行わず、五五歳退職を実施する、(二) 退職金の勤続年数計算に関しても五五歳達齢日をもって打ち切る、という内容の五五歳定年制厳守の提案をした。しかし、組合がこれに対して強く反対したため、地労委の斡旋により、定年制問題については退職金問題と切り離して日を改めて協議することになり、同年一二月二二日、労使とも地労委の退職金に関する調停案を受諾した。

そして、その後も地労委の斡旋により定年制問題について被控訴人銀行と組合が協議を続けた結果、昭和二五年三月三〇日、両者間において、前記(一)の五五歳定年制厳守の件については適当な時期に労使双方が協議する、また、前記(二)の退職金の勤続年数計算の件については、被控訴人銀行提案のとおり五五歳達齢日をもって打ち切るが、現行の定年制が労使の協議により改正されるまでの間の暫定的措置として、五五歳達齢後の在職期間につき一定割合の特別功労金を支給する旨の協定が成立した。

5  昭和二六年、被控訴人銀行は、組合の同意を得て就業規則を改正し、同年八月一日から実施した。この就業規則では、定年につき「職員は五十五歳に達したとき停年とし退職させるものとする。但し願出により引続き在職を必要と認める者は停年後も引続き在職させることがある。」と定められ、また、退職手当の勤続年数の計算については、「当該職員の当行入店の日から満五十五歳に達した日又は其の日以前における中途退職若しくは死亡の日を以て終わる。」と定められた。

6  被控訴人銀行と組合は、定期昇給問題等について経営協議会を開き交渉を行っていたが、昭和三〇、三一年度及び昭和三六年度の交渉では、五五歳を超えて在職中の行員につき、定年前の行員と区別して、原則として昇給させないことで妥結し、また、昭和三二年度の交渉では、組合から、五五歳を超えて在職中の行員についても定年前の行員と同じに昇給させるべきである、銀行側は定年制にこだわりすぎるとの主張が出されたのに対し、被控訴人銀行は、実情に応じて個々に検討して昇給させているが定年制は尊重したい、定年が社会一般の慣例で将来延びるときには延長されるだろうが現状では五五歳定年が普通である、五五歳以上は恩恵的なものであると回答した。

7  昭和三六年六月一日、被控訴人銀行の就業規則が改正され、「職員の停年は満五五歳とする。但し、願出により引続き在職を必要と認めた者については三年間を限度として、その停年を延長することがある。」と定められた。また、同時に作られた退職金規定では、定年を延長された者の退職金につき、五五歳達齢時の本俸を基礎として五五歳までの勤続年数により計算するものとされ、五五歳以降の勤務に対しては一定割合の特別慰労金を支給する旨が定められた。

昭和四〇年九月一〇日に右就業規則の定年規定の「その停年を延長することがある。」との部分が「停年後在職を命ずることがある。」と改められ、また、退職金規定に「この規定において停年とは満五五歳をいう。」との定めが新たに加えられた。そして、この定年規定が本件定年制が実施されるまで適用されてきた。

三従前の定年後在職制度の運用状況等

1  被控訴人銀行では、五五歳定年に達した行員が定年後も引き続き在職を希望する場合には、「なお勤務に耐える健康状態であり、かつ家庭事情からも引き続き勤務を必要とするにつき、在職を許可いただきたい」旨記載した願書に健康診断書及び部課店長の副申を添えて提出することが人事関係事務取扱要領によって定められ、右願い出が認められると、「貴殿は○年○月○日をもって満五五歳停年に達しますが、停年後引き続いて当分の間在職が認められましたので通知します」と記載した人事部長名の「停年後在職発令通知書」が交付されていた。

2  実際の運用状況をみると、男子行員については、五五歳定年に達しても引き続き在職を希望したときは、健康上の理由等で勤務に耐えない者を除いて、定年後在職が認められていた。その実数について、控訴人側の資料(<書証番号略>)と被控訴人銀行側の資料(<書証番号略>)とで開きがあり、厳密にこれを確定することはできないが、それぞれの資料による昭和四二年度から昭和五七年度までの一六年間の状況は、ほぼ次のとおりである。

まず、控訴人が被控訴人銀行の発行する行報に記載された人事消息等に基づいて調査したところによると、右一六年間に五五歳定年に達した男子行員は二九〇名(事務行員二〇四名、庶務行員八六名)で、その約九三パーセントに当たる二七〇名(事務行員一九〇名、庶務行員八〇名)が定年後も在職し、さらにその約八一パーセントに当たる二二〇名(事務行員一四四名、庶務行員七六名)が五八歳まで勤務している。これに対して、被控訴人銀行の資料によると、右一六年間に五五歳定年に達した男子行員は二九九名(事務行員二一二名、庶務行員八七名)で、その約九三パーセントに当たる二七九名(事務行員二〇〇名、庶務行員七九名)が定年後も在職し、さらにその約六九パーセントに当たる一九五名(事務行員一一九名、庶務行員七六名)が五八歳まで勤務している。

定年後在職者で五八歳まで勤務した者の比率は、時期により変動があり、特に事務行員については近年は低下する傾向がみられる。すなわち、控訴人側の資料による事務行員の五八歳在職者は、昭和四二年度から昭和四五年度までは四六名中三六名(七八パーセント)、昭和四六年度から昭和四九年度までは四一名中三三名(八〇パーセント)、昭和五〇年度から昭和五三年度までは四二名中三五名(八三パーセント)、昭和五四年度から昭和五七年度までは六一名中四〇名(六五パーセント)であるが、被控訴人銀行の資料による事務行員の五八歳在職者は、昭和四二年度から昭和四五年度までは四一名中三五名(八五パーセント)、昭和四六年度から昭和四九年度までは三六名中二九名(八〇パーセント)、昭和五〇年度から昭和五三年度までは五二名中三二名(六一パーセント)、昭和五四年度から昭和五七年度までは七一名中二二名(三〇パーセント)である。

定年後在職者で五八歳前に退職した者の中には、健康上あるいは能力上の理由から五五歳後一年間に限って在職が認められた少数の者や、病気、死亡又は自己都合等により退職した者も含まれているが、昭和五〇年代に入ってからは、被控訴人銀行の勧奨に応じて五八歳前に他に転職あるいは出向する事務行員が増加した。これは、中高年齢行員の増加によるポスト不足等の問題が生じてきたため、被控訴人銀行がその対策として、定年後在職中の事務行員に対して途中でいわゆる肩たたきをするようになったからである。

3  男子行員については右のとおりであるのに対し、女子行員については、五五歳の定年まで勤務する者自体が少なかった上、女子行員が定年後在職を希望しても、引き続き勤務することを必要とするだけの家庭事情にないなどの理由により、定年後在職は認められず、昭和五八年までに定年後在職が認められた女子行員は一名のみであった。

4  被控訴人銀行が発行する行報には行員の人事消息が記載されるが、昭和三〇年代から昭和四〇年代前半ころに発行された行報には、「退職(停年)」「退職(五五歳)」という表示のほかに、「退職(満五八歳)」「退職停年五八歳」「退職(停年五八歳)」などと表示した退職者の氏名が記載されたものがある。昭和三〇年の行報に「満五八歳が停年です」という台詞付きの漫画が掲載されたこともある。

また、従業員組合は、長年、組合諸規約や就業規則等を掲載した「組合員必携」を組合員に配布しており、これには、定年制について「宣言規定として五五歳であるが、実質は五八歳である」との記載がある。この記載について、被控訴人銀行が異議を述べたり訂正を求めたりしたことはない。

5  定年後在職者の労働条件は、おおむね次のとおりであった。

定例給与 五四歳時の定例給与が引き続き支給される。

定期昇給 前記のとおり、以前は経営協議会での労使協議により定年前行員と区別されたこともあったが、行規によって実施されていた。

賞与 昭和五四年以降は定年前行員と同じく「(本俸+家族手当+役付手当)×6.8か月(夏期3.3か月、冬季3.5か月)+資格別定額」が支給された。

役付手当 従前の役職が当然に変更されることはなく、役付手当が減額されることもなかった。

四本件定年制の成立

1  高齢化の進行に伴う雇用対策の必要性は昭和四〇年代から指摘されていたが、昭和五〇年代にはいってから六〇歳定年制の実現を中心とする高年齢労働者の雇用安定を図る動きが活発になった。すなわち、

(一) 昭和五一年、中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法が改正されて、常用労働者の六パーセントの高年労働者(五五歳以上)を雇用することが努力義務として定められ、昭和五二年には、国会で定年延長の促進を含めた雇用の安定に関する決議がなされ、また、昭和五三年一〇月、労働省主催の定年延長推進懇談会において、五五歳定年制が主流になっていた銀行業界等六業種に対し定年を六〇歳に延長するよう要請がなされた。

(二) 経済界においても、昭和五三年一一月、経済同友会が六〇歳定年制の導入も可能とする見解をまとめたのに続いて、昭和五四年八月には、日経連が、六〇歳までの雇用機会の提供が企業の努力義務であることを指摘するとともに、賃金制度及び退職金制度等の全体的見直しを図るべきことを指摘した。

(三) 一方、労働側でも、昭和五四年七月の政策推進労組会議において、定年延長は六〇歳制度の要求を原則とすること、定年延長に伴う現行の賃金及び退職金等の労働条件は、社会水準の確保を前提とし、定年制六〇歳を優先させることで対応することなどが決められた。

また、全日本労働総同盟も、昭和五四年九月、定年延長推進のために提言を行い、定年延長を最優先課題として進めるためには、五五歳以降の定期昇給や退職金について一定の譲歩をすることが必要であるとした。

(四) 昭和五四年一月二三日労働省職業安定局長が各都道府県知事宛てに発した「高年齢者雇用対策の推進について」の通達では、定年延長を指導するに当たり、賃金体系、退職金制度、人事管理システムの三点の是正について労使関係者の理解を得るようにするものとしている。

昭和五四年八月一〇日の閣議決定により、高年齢労働者の雇用の安定を図ることを目的とする第四次雇用対策基本計画が決定された。

(五) 以上のような動向に応じて、都市銀行の多くが昭和五六年四月から定年を六〇歳に延長し、地方銀行においても、昭和五七年ころから六〇歳定年制を採用する銀行が現れ始めた。

(六) 被控訴人銀行に対しては、昭和五六年一〇月に新潟県知事から、定年延長及び高年齢者の雇用率六パーセントの実現について書面による要請があり、昭和五七年三月には労働大臣から、六〇歳定年制の早期実施を求める要請とともに定年延長問題の取組状況につき報告が求められた。

2  被控訴人銀行においては、定年延長への具体的動きは、従業員組合を中心にして展開された。

組合は、昭和五五年一二月、高齢化問題専門委員会を組織して、高齢化問題に対する組合の対応策の検討を開始した。同委員会は、昭和五七年七月一七日、「現在の定年後在職制度は、その運用に当たって健康状態や家庭の事情などの基準が設けられているので、高齢化が進展する中で誰でも一定年齢まで勤務できる定年そのものを延長する必要がある」との立場に立って、六〇歳定年制を実現すること及び労働条件は入行から定年退職まで一貫した処遇、体系を前提とすることなどを内容とする答申をした。

右答申を受けた組合は、定年延長の必要性について組合員の認識を深め各層の意見を吸収するための内部討議を経て、昭和五七年一〇月二八日、定年延長に関する執行部案を可決し、同日、被控訴人銀行に対して「定年年齢を満六〇歳とする。職務処遇については、現行の体系を継続して考え、生きがい、働きがいのもてるものとする。賃金及び退職金については、現行諸制度及び体系を基本とする。福利厚生その他の労働条件については、現行の諸制度、諸規定を継続適用する。実施日は昭和五八年四月一日とする。」との内容の定年延長要求を提出した。

被控訴人銀行と組合との交渉において、被控訴人銀行は、定年延長が時代の趨勢であることを認めながらも、これによる人件費の増加、人事の停滞、企業活力への影響等も考慮しなければならないとして、定年延長をした場合の職位や賃金等の見直しを検討する必要があるとの態度を示し、これに対して、組合は、定年延長者の職務や処遇については入行から退職まで一貫して現行の体系を維持することを求め、職位や賃金の見直しは組合要求の趣旨と異なるとして反対した。

3  昭和五八年二月一日、被控訴人銀行は、組合の定年延長の要求に対しておおむね次のとおり回答した。

(一) 昭和五八年四月一日以降定年を現行の満五五歳から満六〇歳に延長する。

延長後の処遇は次の(二)以下による。

(二) 身分・呼称は変更せず、資格は従前どおりとする。

(三) 職位 役職者については、五七歳以降原則として新設する参事役、副参事役、業務役、副業務役につく。

(四) 職務 経験、能力、適性を勘案の上で配置する。意欲、体力、能力があれば部店長等の役職にとどまりうる。

(五) 給与等

(1) 定例給与を次のとおり支給する。

基本本俸 現行の本俸を基本本俸と加算本俸に分割し、加算本俸は五五歳達齢日の翌月一日以降支給しない。加算本俸は事務行員につき五万八〇〇〇円、庶務行員につき五万二〇〇〇円とする。

資格手当 現行どおり支給する。

扶養親族手当 現行どおり支給する。

役付手当 新設する職位を含め現行役付手当を職位に対応した手当に改定し支給する。

その他の手当 現行どおり支給する。

(2) 賞与は年間に定例給与の三か月分程度を支給する。

(3) 定期昇給は実施しないが、ベースアップは実施する。

(4) 退職金は現行の五五歳定年時水準に五年間分の特別慰労金分を加算した額を六〇歳定年時に支給する。

(5) 年金は現行水準を下まわらないものとする。

(6) 福利厚生については原則として現行諸制度を継続適用する。

4  右回答につき、組合(行員総数三五四五名の約九〇パーセントの三二〇五名が加入していた。)は、支部長会議及び各級役員会議のほか、組合員の意見を集約するための各職場会議を開いて討議を行った。そして、六〇歳までの定年延長は評価したものの、五七歳以降の職位の変更と五五歳以降の賃金の低下を納得しがたいとした。これに対し、被控訴人銀行は、職位変更はポスト不足に対応するためであること、定年延長に伴い全年齢層の給与体系を見直すのが本来は望ましいが、定年延長を円滑に進める観点から、当面は延期期間である五五歳以降の給与について特別の措置をとったもので、他銀行の水準等を考慮したことなどを説明したが、組合はなお賃金水準の引き上げを要求した。更に交渉が続けられた結果、昭和五八年三月八日、被控訴人銀行は、加算本俸を事務行員につき五万八〇〇〇円から五万五〇〇〇円に、庶務行員につき五万二〇〇〇円から四万九〇〇〇円に減額する(右減額分だけ基本本俸が増額になる。)こと、五五歳以上の世帯主行員に対し学資やローン返済のため三〇〇万円を限度とする特別融資制度を新設し、既往の住宅貸付の返済方法等の変更に応じる措置をとることなどを内容とする修正回答をし、これ以上の修正の余地はない旨伝えた。

組合は、支部長会議において、賃金水準は十分とはいえないが制度全体からみれば一応のものを確保したと評価し、これ以上の交渉継続は難しいとの判断から、定年延長要求を終息させることを確認し、同年三月一五日から二四日までの間に組合員による職場討議を行った。この職場討議では、定年延長を評価し妥結やむなしとする意見がある一方で、五五歳以降の年間賃金が五四歳時の六三ないし六七パーセントに低下することを不満とし、執行部の対応を厳しく批判する意見もあったが、同年三月二八日の中央委員会において前記の修正回答を受け入れることが最終的に決定された。

5  被控訴人銀行と組合は、昭和五八年三月三〇日、右妥結内容に従って定年を延長することを内容とする本件労働協約を締結した。そして、被控訴人銀行は、就業規則の定年条項を「行員の定年は満六〇歳とする。」と改正し、従来の定年後在職制度の規定を削るとともに、給与規定及び退職金規定を改正し、昭和五八年四月一日から本件定年制を実施した。

五当時の被控訴人銀行の状況等

被控訴人銀行の昭和五八年当時の行員の平均年齢は33.6歳(男子事務行員は38.1歳)で地方銀行の平均より高く、五五歳以上の行員の占める比率も他の地方銀行よりかなり高い上、今後さらに高齢化が進む見通しであった。そして、六〇歳まで定年を延長すると、五五歳以上の行員数は、昭和五八年度に九九名、昭和六〇年度に一六三名、昭和六二年度に三三八名、昭和六四年度に四一八名と逐年顕著に増加し、その年間賃金を五四歳時の賃金水準で支払うとなると、昭和五八年度は七億九三〇〇万円、昭和六〇年度は一三億二一〇〇万円、昭和六二年度は二七億三二〇〇万円、昭和六四年度に三四億九四〇〇万円に達する計算であった。

また、昭和五九年度において管理職対応資格者は七五五名いるのに対して、管理職ポストは四〇一しかなく、三五四名分のポストが不足することになり、定年延長によってこのポスト不足が拡大することが見込まれた。

銀行業界においては、昭和五六、七年ころから、経済社会の安定成長への移行や金融自由化の動きの活発化等に伴い、競争の激化が予想され、収支内容の向上と自己資本の充実が求められるようになった。被控訴人銀行では、昭和五七年度に約九七億円、昭和五八年度以降は一〇〇億円を超える経常利益をあげていたが、総預金量は昭和五〇年度の六九一五億円から昭和五八年度一兆五七三〇億円に伸びたにもかかわらず、当期利益は昭和五〇年度の三九億一一〇〇万円から昭和五八年度四三億円と他の地方銀行の平均伸び率を下まわる伸びにとどまり、預金と貸出しとの利鞘は、昭和五四年度0.48パーセント、昭和五五年度0.07パーセント、昭和五六年度0.04パーセント、昭和五七年度0.31パーセント、昭和五八年度0.19パーセント、昭和五九年度マイナス0.11パーセント、昭和六〇年度マイナス0.12パーセントであった。行員一人当たりの人件費は、昭和五六年度五九四万円、昭和五七年度六一六万円、昭和五八年度六四九万円、昭和五九年度六八四万円で、預金に対する人件費率とともに地方銀行の平均を上まわり、行員一人当たりの営業純益は地方銀行の平均に達せず、当期利益に対する株式配当金の割合を示す配当性向は昭和五九年度31.57パーセント(地方銀行平均25.15パーセント)であった。これらの数字からすると、被控訴人銀行の経営効率及び収益力は十分といえるものでなかった。

六他銀行の定年制及び賃金水準等

1  都市銀行の多くは、昭和五六年に六〇歳定年制を採用している。その内容は、延長後は管理職位を外れるものが多く、定例給与は五四歳時の六〇パーセントから八〇パーセントに減額され、賞与は年間三か月程度に押さえられ、退職金も五五歳時で計算するものが多い。

地方銀行では、昭和五七、八年から昭和六〇年にかけて定年延長を実施した銀行が多い。延長前は、ごく一部の銀行で五八歳定年制をとっており、北越銀行及び千葉興業銀行の場合は五八歳定年後も五七歳時の本俸を継続適用することにしている。しかし、五五歳定年を六〇歳に延長した多くの地方銀行の例をみると、職位は新設職位へ移行するものがほとんどであり、年間賃金は五四歳時の七〇ないし八〇パーセントどまりで、五〇パーセント程度に減額される銀行もあり、ベースアップは行われるものの、定期昇給は大部分の銀行で実施されず、賞与については年間三か月程度が普通で、退職金は五五歳時で計算して加算金を支給する例が多い。

定年延長後の年間賃金を昭和五八年前後を中心に全国の地方銀行十数行の公表された水準と比較すると、被控訴人銀行では、五七歳以降で店長級が六八四万円、次長級が五九七万円、代理級が四八九万円(五五、六歳時はもっと高額)であるのに対し、他の地方銀行の中で高額な例は、五六歳まで店長級六四五万円、次長級五六二万円、代理級四九〇万円、五七歳以降店長級五六四万円、次長級四八六万円、代理級四二六万円ほどであり、被控訴人銀行の五五歳から六〇歳までの間の賃金水準は最上位の部類に属する。

2  総理府統計局の昭和五七年全国家計調査によれば、世帯主の年齢が五五歳から五九歳までの世帯における一か月の平均消費支出は二七万九五五八万円である。また、新潟県の昭和五七年の実態調査によれば、新潟県下の五〇歳から五九歳までの男子労働者の月額賃金の平均は、中小企業で一八万九九二四円、大企業で二八万一八六二円となっている。これらと較べると、右1の被控訴人銀行の代理級の年間賃金の月平均額はかなり高いものである。

七本件定年制による賃金等及び福利厚生制度の変動

本件定年制によると、五五歳達齢後の年間賃金が五四歳時の六三ないし六七パーセントに減額されることになる。控訴人について、従前の定年後在職制度の下で五八歳まで勤務した場合に得ることができた賃金等と、本件定年制により六〇歳まで勤務して得た賃金等とを比較すると、おおむね次のようになる(定年後在職制度が続いた場合の昇給とベースアップがどうなったかは定かでないので、本件定年制の下で行われたのと同様であるとの前提をとる。)。

1  定例給与及び賞与

別紙債権目録(一)(二)記載のとおりである。同目録(二)は、五八歳達齢時までの期間について比較したものであり、同目録(一)は、定年後在職制度の下で五八歳達齢後もそれまでと同一の賃金を受けるとの前提で六〇歳達齢時までの期間について比較したものである。

右各目録の「新定年制による支払額」の定例給与についていうと、控訴人は、本件定年制の下で昇給、ベースアップを受けたが、昭和五九年一一月に五五歳に達したので、翌一二月以降、加算本俸五万八一〇〇円が減額され、また、昭和六一年一一月に五七歳に達して業務役の職に変更になったため、役付手当五万円が減額されている。

賞与については、従来は「(本俸+家族手当+役付手当)×6.8か月(夏季3.3か月、冬季3.5か月)+資格別定額」と計算されていたが、本件定年制により、五五歳以降は「(基本本俸+家族手当+役付手当)×三か月(夏季1.5か月、冬季1.5か月)+資格別定額」と計算されることになった。

これによると、控訴人が定年後在職制度の下で五五歳から五八歳までに得ることができた賃金の合計額は二八七〇万九七八五円であるのに対し、本件定年制により五五歳から五八歳までの間に得た賃金の合計額は一九二八万〇一三三円であり、後者が九四二万九六五二円少ない。このような差が生じたのは、定例給与の減額幅は月数万円から一二万円程度であるが、賞与が従前の約三分の一近くに減額になったためである。しかし、本件定年制により六〇歳まで勤務した場合の五五歳以降の賃金の合計額は三〇七八万七二七八円であり、定年後在職制度により五八歳で退職した場合の賃金総額より二〇七万七四九三円多い計算になる。

2  退職金

控訴人は、本件定年制により、六〇歳退職時に一二二九万九〇〇〇円の退職金を受けた。定年後在職制度の下で五八歳退職を前提にして計算すると、五五歳定年時の本俸で計算される退職金一一七二万四三八〇円と満五八歳までの定年後在職分の特別慰労金三三万二九二〇円の合計一二〇五万七三〇〇円となり、本件定年制による方が二四万一七〇〇円多い。

なお、本件定年制の実施により、五五歳以上五八歳以下で自己都合により退職し又は勧奨により他企業に就職した場合には、退職金が従前の定年後在職制度の下での計算よりも増額されることになった。

3  福利厚生制度

被控訴人銀行では、行員が業務上災害又は通勤途上災害を被った場合にいわゆる上積み補償を行うための災害補償規定があり、従来は五五歳達齢後はその適用がなかったが、本件定年制により六〇歳まで適用される。

また、被控訴人銀行には、行員が在職中に死亡し又は傷病による廃疾のために退職した場合に、本人及びその家族に対して年金を支給する家族年金制度があるが、これについても、本件定年制により従来の五五歳から六〇歳まで適用が延長されることになった。

被控訴人銀行には、在職中の行員又は定年退職後の行員が死亡又は重大な障害を受けた場合に弔慰金を支給する一年定期団体保険による弔慰金・傷害見舞金制度があり、控訴人と同じ主事二級の資格者の場合は、基礎額四七〇万円、加算額二二〇万円、合計六九〇万円について、退職時から六〇歳まではその八割、六〇歳を超え満六五歳まではその五割を支給することになっていたところ、本件定年制の実施に伴い、六〇歳までは一〇割支給に改められ、さらに六五歳後は支給されなかった弔慰金・見舞金を六五歳から七〇歳まで二割五分支給することになった。

そのほか、五五歳以上の世帯主行員に対して特別融資制度が新設され、住宅貸付の返済負担を軽減する措置がとられたことは前記のとおりであるし、六〇歳まで継続適用になった福利厚生制度の主なものとしては、健康保険制度、私傷病休職時の生活保障制度、財形貯蓄制度、入院補助金制度、住宅貸付制度等がある。

第二本件就業規則変更の効力

一就業規則の変更によって、労働者の既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは、原則として許されないが、労働条件の集合的処理を建前とする就業規則の性質からいって、当該条項が合理的なものである限り、個々の労働者において、これに同意しないことを理由として、その適用を拒むことはできないと解される。そして、右合理性の有無の判断に当たっては、就業規則の変更によって労働者の被る不利益の性質、内容及び程度と変更の必要性及びその内容との比較考量を中心に諸般の事情を総合的に勘案して、これを決定すべきである。

以下、この見地から、本件定年制を定めた本件就業規則変更の合理性の有無について検討する。

二本件就業規則の変更により被る労働者の不利益

1  被控訴人銀行において従前行われていた定年後在職制度は、職員の定年を五五歳と定める一方で、五五歳達齢者でも願い出によって被控訴人銀行が引き続き在職の必要を認めた者については、三年間を限度としてさらに在職させることができるとするものである。右定年後在職を願い出るについては、健康上勤務に耐えうること及び家庭事情が引き続き勤務を要することの二つを必要としていたが、実際の運用においては、男子行員であれば、勤務に耐える健康状態である限り、ほとんどが願い出を認められるのが実情であった。

控訴人は、被控訴人銀行において実質五八歳定年制をとることが昭和二二年六月三〇日の労使交渉で合意されていたものであり、かつ、長年にわたる定年後在職の慣行により五五歳達齢者が従前と同じ労働条件で五八歳まで在職できることが行員の既得権になっていた旨主張する。

しかしながら、控訴人の主張する昭和二二年六月三〇日の右労使合意の事実が認められないことは前記のとおりである。また、男子行員の定年後在職者が圧倒的に多くなっていたものの、前記第一の二及び三で認定した定年制及び定年後在職者の処遇に関する労使交渉の経過、定年後在職者の退職金の計算方法、福利厚生制度の適用年齢の制限等の諸事実に照らすと、五五歳定年後の在職が、定年に達しても五八歳までは当然に定年前の在職者と同一の身分を継続保有できるとの前提で、被控訴人銀行の業務上の都合にかかわりなく行われてきたものであるとは解されず、むしろ、基本的には、被控訴人銀行が経営上の裁量によって実施する上乗せ措置であり、定年前の在職とは異なる特種の待遇であるという建前は崩されていないと認めるべきである。実際にも、男子行員について一年間に限り定年後在職を認められた例がごく少数あるし、定年後在職を認められても五八歳まで勤務できる者は減少しており、さらに、女子行員については一名を除いて定年後在職が全く認められていなかったのである。したがって、定年後在職の実情から、被控訴人銀行において、就業規則に五八歳定年の定めがある場合と同じような実質五八歳定年制が採用され、行員が五五歳後も当然に従来の水準を下まわらない労働条件で五八歳まで勤務できる既得の権利ないし法的地位を有していたと認めることは困難である。

もっとも、男子行員について長年継続されてきた右の定年後在職の運用は、これを就業規則に根拠をもつ労働条件と同じ既得権とみることはできないにしても、被控訴人銀行において広く定着した慣行的事実であり、特別のことがなければ右運用によって定年後在職ができると考えてきた男子行員、とりわけ右運用を前提にして生活設計を立ててきた中高年齢層男子行員の期待的利益は、保護に値するものといわなければならない。就業規則の上で五五歳定年制がとられているからといって、延長された五五歳後の労働条件をどのように定めても不利益変更の問題を生じる余地がないと解することはできない。

2  しかるところ、本件定年制によって、定年は延長されたが、五五歳からの年間賃金が五四歳時の六三ないし六七パーセントに減額されたため、延長された五五歳から六〇歳退職までの間に得られる賃金(定例給与及び賞与)の総額が、定年後在職制度の下で五五歳から五八歳まで勤務した場合に得ることができた賃金の総額とあまり変わらなくなったことは、前記のとおりである。なお、控訴人は、右の賃金総額の比較に当たり、定年後在職制度により得ることができた賃金に六〇歳達齢時までの年六分の利息を加算すべきであるというが、賃金のもつ生計費的性格からして、これを年六分の利息で運用できると認めるのは実際的でないから、右利息を加算した上で比較するのは相当でない。

退職金は、控訴人の例によっても、支給額の点では本件定年制による方が若干多くなる。

3 このように、定年が延長されて賃金を得る期間が長くなっても、五五歳以降の年間賃金が減額されたため、定年後在職制度の下で五八歳まで勤務すれば得られたのとほぼ同額の賃金を、六〇歳定年まで勤務しなければ得ることができなくなるのは、その限りで不利益な変更であるといえる。

控訴人は、右不利益を目して、五八歳達齢後の二年間をただ働きさせるに等しいものであると主張する。確かに、賃金総額の計算上からはそのようにいうこともできないではないが、現実的にみれば、社会の高齢化が急速に進み、高年齢退職者がしかるべき条件で再就職する機会も必ずしも保証されていない状況下で、生計の資としての賃金について、従前の額による賃金収入が遅くても五八歳までに終わりになることと、従前の賃金が五五歳以降は減額されるものの、六〇歳までは収入が確保されて減額分を取り戻せることとの実生活上の利害得失をどのようにみるかという問題である。この観点からは、後者の賃金体系をとっても、減額後の賃金、殊に毎月の定例給与が一定の水準に維持される限りは、それによる不利益が前者の賃金体系に較べてはるかに大きいと一概に断定することはできない。

のみならず、先にも述べたとおり、定年後在職する男子行員でも実際に五八歳までの勤務が保障されていたとはいいがたいし、また、女子行員及び健康上支障のある男子行員には定年後在職そのものが認められなかったのであって、こうした五八歳まで在職できない行員のことを考えれば、本件定年制が賃金面で行員に不利益のみをもたらすものであるとはいえないことになる。

三本件就業規則変更の必要性及び内容等

1 昭和五七、八年当時、労働者の定年延長は社会的要請であり、銀行業界も六〇歳定年制の実現を強く求められていたこと、被控訴人銀行に対しては、労働大臣及び県知事から定年延長の早期実施の要請があったのに加え、従業員組合からも六〇歳定年制の要求が出されたことなどは、前記第一の四で認定したとおりである。これらの事実によれば、被控訴人銀行としては、経営上の都合により従来の定年後在職制度を改める必要があったわけではないけれども、そうした銀行側の都合とはかかわりなく、早急に六〇歳定年制を導入しなければならない必要に迫られていたものであり、定年後在職が認められなかった女子行員等をも含む全行員を対象として定年延長を実施することは、当面の最優先課題であったと認めるべきである。

2 定年延長に伴う問題として、人件費の増大、人事の停滞及び企業活力の低下等が指摘され、これらに対応するには従来の年功序列型の賃金体系や人事管理を見直す必要があることは、多く指摘されていたところである。そして、被控訴人銀行では、中高年齢層行員の比率が地方銀行の平均より高く、今後さらに高齢化が進む見通しであり、ポスト不足も増える反面で、経済効率及び収益力が十分とはいえない状況であったことに鑑みれば、六〇歳への定年延長に伴い賃金水準等の修正を行う必要があったと認められる。

また、被控訴人銀行が、定年延長を円滑に進めるために、従前の定年である五五歳までの給与体系を当面は動かさず、定年後在職となる五五歳以降の給与についてのみ特別の措置をとることとしたことも、首骨できるところである。

右の点について、控訴人は、定年を延長しても、出向又は転職等により現実に六〇歳まで残る行員は減少するから、人件費は増加しないし、現に本件定年制の実施後はかえって人件費が減少している旨主張するが、出向又は転職が将来的にどうなるかは経済事情等にもよることであり、その変動に応じてその都度定年制の内容を見直すことは実際上難しいから、出向又は転職の増加を前提にして定年制を考えるべきであったとはいえない。

してみると、定年を六〇歳まで延長するについて、五五歳以降の年間賃金を五四歳時よりも減額することとした被控訴人銀行の経営判断が、当時の状況下において根拠と必要性を欠くものであったと認めることはできない。

3  本件定年制により六〇歳定年まで勤務して得られる年間賃金総額が、従前の定年後在職制度により五八歳まで勤務した場合の年間賃金総額とあまり変わりがないことは、前記のとおりである。

しかし、本件定年制による賃金水準を五五歳定年を延長した他銀行の例と比較してみると、従前賃金の六十数パーセントに減額することが特に異例とは認められないし、減額後の賃金額は地方銀行の中では最上位の部類に属するものである。統計に現れた五五歳以降の年代の全国平均消費支出や新潟県下の平均賃金からみても、本件定年制による減額後の賃金が一般的な生活水準以下のものであったとは認められない。

控訴人は、従前と同一労働に従事し同一責任を負担しながら、五五歳達齢により従前の賃金を大幅に減額され、若年の非役席者と同程度になるのは、年齢による不当な差別である旨主張するけれども、従前の賃金が職能給のみから成っていたとは認められないから、右主張は立論の前提を欠くものであり、採用の限りでない。

これらによると、年間賃金が減額されることになったとはいえ、その賃金が一般水準からみて低きに失し、社会的相当性を欠くものであったとはいえない。

4  次に、本件定年制採用後の福利厚生制度を従前の定年後在職制度当時と比較すると、前記第一の七のとおり、(一) 定年前に勧奨又は自己都合で退職した場合の退職金が増額され、(二) 災害補償の補償期間が延長され、(三) 家族年金の受給期間が延長され受給額も増額され、(四) 一年定期団体保険による弔慰金、傷病見舞金の適用年齢が延長され支給額も増額され、(五) 五五歳以上の行員につき特別融資制度が新設され、住宅貸付について返済負担の軽減が図られる、といった各種の改善策がとられている。これらは、直接には年間賃金の減額に対する代償措置とはいえないにしても、本件定年延長の一環をなすものであるから、合理性判断の一要素として評価すべきものである。

5 本件定年制の実施について、行員の約九〇パーセントで組織されている従業員組合は被控訴人銀行と交渉し、これに同意している。行員の中に本件定年制に強く反対し組合執行部の姿勢を批判する者がいたことは事実であるが、組合執行部が内部の検討や討議を尽くさず大多数の組合員の意思に反して受諾に走ったものであるとの控訴人の主張は、これを認めることができない。年功序列型賃金制度等の修正を伴う定年延長は、事柄の性質上、年齢層間の利害の対立や意見の不一致をきたしがちな問題であることを考えると、労働条件について行員の意見を集約し、行員の利益を代表する立場にある組合との協議及び合意に基づいて定年制の内容を決定したことは尊重されてしかるべきである。

四総合判断

高齢化社会における雇用のあり方として、高年齢労働者の雇用の確保と、その労働条件の充実を図ることが必要とされている。右の雇用の確保のために、多くの企業において定年延長が行われたが、それに伴う労働条件に関しては、不十分であるとする批判が少なくないことは公知である。右二つの要請を併行的に実現することがもとより望ましいけれども、様々な事情が絡み合うことの多い制度改革期の対応として考えれば、まず六〇歳定年制の早期実施を優先させ、その労働条件の十分でない点は今後の労使交渉等により改善、向上を期するという選択をすることも、やむを得ない場合がありうる。

また、一般的にいうと、定年延長に伴い旧定年時より前の時期にまで遡って労働条件を不利益に変更することは、定年延長と労働条件の低下との引き換えにほかならず、定年延長の趣旨に照らし、原則としてたやすくその合理性を肯定することができないと考えられる。しかし、被控訴人銀行において行われていた定年後在職制度は、前判示のとおり実質五八歳定年制を採用したものとは認められないものであるから、右定年後在職制度の運用慣行が本件定年制により改変されるからといって、直ちに旧定年時より前の時期の労働条件を不利益に変更する場合と同列において論じることはできない。

以上のような観点から、前記二及び三で検討したところに基づいて、本件定年制の採用により行員が受けることとなる不利益の性質、内容及び程度と、本件定年制を採用するに至った被控訴人銀行の諸事情、本件定年制の内容ないしその賃金水準とを比較考量し、同時に行われたその他の労働条件の改善状況、組合との合意の存在等の諸事情をも総合的に勘案すると、本件定年制を定めた就業規則の変更は、それによって控訴人が被った賃金面の不利益を斟酌しても、なお、定年制度改革期における労働条件の定めとして合理性を失うものではないと認めるのが相当である。

本件定年制の導入によって、控訴人のような五五歳直前の高年齢層行員の受ける影響が実際上最も深刻であったことは明らかであり、これを緩和するためには、控訴人の主張するように、本件定年制を実施する一方で、経過措置として、従前の定年後在職制度をも残し、該当層行員にそのいずれかを選択させることも考えられる。しかし、このような経過措置をとることは、該当層行員を異なる労働条件のグループに分けることになり、その処遇や人事管理、さらには行員間の感情面等で好ましくない結果をきたすおそれもないではない。したがって、右経過措置をとるかどうかは当該企業の経営判断に委ねるほかないことであり、被控訴人銀行がこれをとらなかったことをもって、本件就業規則の変更が合理性を欠くとすることはできない。

本件就業規則の変更は有効と認めるべきである。

第三結論

以上の次第で、本件就業規則の変更による新定年制が無効であることを前提にして、従前の定年後在職制度による賃金との差額の支払を求める控訴人の請求は、その余の点について判断するまでもなく、失当というほかない。

よって、右と結論を同じくする原判決は相当であって、本件控訴及び当審において変更した請求はいずれも理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官佐藤繁 裁判官岩井俊 裁判官小林正明は転補につき署名捺印することができない。裁判長裁判官佐藤繁)

別紙

債権目録(二)

(単位:円)

支払年月日

旧定年制に

よる支払額

新定年制に

よる支払額

差額

S59. 12.10

1,690,195

1,366,879

323,316

12.20

454,870

396,770

58,100

S60.  1.20

454,870

396,770

58,100

2.20

454,870

396,770

58,100

3.20

454,870

396,770

58,100

4.20

470,570

408,670

61,900

5.20

470,570

408,670

61,900

6.20

470,570

408,670

61,900

6.21

1,650,191

642,055

1,008,136

7.21

470,570

408,670

61,900

8.20

470,570

408,670

61,900

9.20

470,570

408,670

61,900

10.20

470,570

408,670

61,900

11.20

470,570

408,670

61,900

12.10

1,745,445

668,055

1,077,390

12.20

470,570

408,670

61,900

S61.  1.20

470,570

408,670

61,900

2.20

470,570

408,670

61,900

3.20

470,570

408,670

61,900

4.200

484,270

418,870

65,400

5.20

484,270

418,870

65,400

6.19

1,689,241

644,055

1,045,186

6.20

484,270

418,870

65,400

S61.  7.20

484,270

418,870

65,400

8.20

484,270

418,870

65,400

9.20

484,270

418,870

65,400

10.20

484,270

418,870

65,400

11.20

484,270

418,870

65,400

12.10

1,789,195

671,056

1,118,139

12.20

484,270

368,870

115,400

S62.  1.20

484,270

368,870

115,400

2.20

484,270

368,870

115,400

3.20

484,270

368,870

115,400

4.20

494,770

374,270

120,500

5.20

494,770

374,270

120,500

6.18

1,674,071

558,555

1,115,516

6.20

494,770

374,270

120,500

7.20

494,770

374,270

120,500

8.20

494,770

374,270

120,500

9.20

494,770

374,270

120,500

10.20

494,770

374,270

120,500

11.4

494,770

374,270

120,500

12.10

1,235,727

417,758

817,969

合計

28,709,785

19,280,133

9,429,652

S62.12.10の臨給は7/1〜11/4(127日)と11/5〜12/31(57日)で日割計算

別紙

債権目録(一)

(単位:円)

支払年月日

旧定年制に

よる支払額

新定年制に

よる支払額

差額

S59. 12.10

1,690,195

1,366,879

323,316

12.20

454,870

396,770

58,100

S60.  1.20

454,870

396,770

58,100

2.20

454,870

396,770

58,100

3.20

454,870

396,770

58,100

4.20

470,570

408,670

61,900

5.20

470,570

408,670

61,900

6.20

470,570

408,670

61,900

6.21

1,650,191

642,055

1,008,136

7.21

470,570

408,670

61,900

8.20

470,570

408,670

61,900

9.20

470,570

408,670

61,900

10.20

470,570

408,670

61,900

11.20

470,570

408,670

61,900

12.10

1,745,445

668,055

1,077,390

12.20

470,570

408,670

61,900

S61.  1.20

470,570

408,670

61,900

2.20

470,570

408,670

61,900

3.20

470,570

408,670

61,900

4.20

484,270

418,870

65,500

5.20

484,270

418,870

65,400

6.19

1,689,241

644,055

1,045,186

6.20

484,270

418,870

65,400

7.20

484,270

418,870

65,400

8.20

484,270

418,870

65,400

9.20

484,270

418,870

65,400

10.20

484,270

418,870

65,400

11.20

484,270

418,870

65,400

12.10

1,789,195

671,056

1,118,139

12.20

484,270

368,870

115,400

S62  1.20

484,270

368,870

115,400

2.20

484,270

368,870

115,400

3.20

484,270

368,870

115,400

4.20

494,770

374,270

120,500

5.20

494,770

374,270

120,500

6.18

1,674,071

558,555

1,115,516

6.20

494,770

374,270

120,500

7.20

494,770

374,270

120,500

8.20

494,770

374,270

120,500

9.20

494,770

374,270

120,500

10.20

494,770

374,270

120,500

11.20

494,770

374,270

120,500

12.10

1,235,727

417,758

817,969

12.10

554,618

187,497

367,121

S62. 12.20

494,770

374,270

120,500

S63.  1.20

494,770

374,270

120,500

2.20

494,770

374,270

120,500

3.20

494,770

374,270

120,500

4.20

494,770

380,770

114,000

5.20

494,770

380,770

114,000

6.16

1,674,071

553,255

1,120,816

6.20

494,770

380,770

114,000

7.20

494,770

380,770

114,000

8.20

494,770

380,770

114,000

9.20

494,770

380,770

114,000

10.20

494,770

380,770

114,000

11.20

494,770

380,770

114,000

12.9

1,790,345

620,805

1,169,540

12.20

494,770

380,770

114,000

H1.  1.20

494,770

380,770

114,000

2.20

494,770

380,770

114,000

3.20

494,770

380,770

114,000

4.20

494,770

388,570

106,200

5.20

494,770

388,570

106,200

6.19

1,674,071

544,805

1,129,266

6.20

494,770

388,570

106,200

7.20

494,770

388,570

106,200

8.20

494,770

388,570

106,200

9.20

494,770

388,570

106,200

10.20

494,770

388,570

106,200

11.4

494,770

388,570

106,200

12.8

1,235,727

425,903

809,824

総計

47,513,097

30,787,278

16,725,819

1.定期昇給は主事2級標準として2,000円とする。

2.役付手当は部長補佐とする。

3.資格手当は主事2級とする。

4.S62.12.10の臨給は

7/1〜11/4(127日)と11/5〜12/31(57日)で日割計算

5.臨時給与は下記の算式で計算

上期 (基本+加算+家手+役手)×3.5+資格別定額

下期 (基本+加算+家手+役手)×3.5+資格別定額

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